認定審査会で遭遇した「直接生活介助・入浴」にまつわる悲劇
  一次判定ソフトが役立たずであることを示す実例

 ここにお示しする例は塩谷町の認定審査会に登場した一例です。その基本調査結果と一次判定結果をここにお示しします。これを見ていただければ、この申請者の要介護状態区分は要介護5が妥当であることは明らかだと思います。ところが一次判定結果は要介護認定等基準時間77分で要介護3(70分以上、90分未満)と判定されています。当然審査会では基本調査、意見書より要介護5相当の状態像と判断し、要介護状態区分を変更いたしました。
 左図の水色の部分はこの審査例の中間評価項目の平均得点を示したレーダーチャートで、赤線は要介護3の平均得点(厚生省提供)ですが、この審査例の要介護状態区分は要介護3とは明らかにかけ離れていることは一目瞭然です。一方、右図の赤線は要介護5の平均得点(厚生省提供)ですが、それでも審査例の水色の部分は充分にカバーされ、これを見ても要介護5相当の要介護状態区分であることは明白です。

 それではどうしてこの様な明らかに間違った一次判定となったのでしょう。それを検証するために、9つの樹形モデルをながめていたら、基本調査票のたった一ヶ所のチェックを変更するだけで要介護認定等基準時間が77分から110分へと、何と33分も増えるところを見つけてしまったのです。要介護認定等基準時間110分で要介護5になるのですが、この審査例自体は要介護5は妥当だと思いますが、どうしてこの様なことになるのかその理由を理解することが出来ないのでここにお示しいたします。

 一ヶ所のチェックを変更した項目とは、右図に示した第3群(複雑動作)の4.洗身です。"全介助"を"行っていない"と変更したことによって要介護認定等基準時間が33分も増えたのです。それでは、この項目は「認定調査票記入の手引き(基本調査の記入要綱)」(厚生省提示)にはどのように規定されているのか以下に提示します。一部分ではわかりづらいと思いますので全文掲載するとともに、認定調査票記載に関するQ&A集(厚生省提示)も掲載いたします。

3−4 洗身
1.自立  2.一部介助  3.全介助  4.行っていない
項目の定義
 入浴時に自分で身体を洗うか,身体を洗うのに介助が行われているかどうかを評価する項目である。
 ここでいう洗身とは,浴室内(洗い場や浴槽内)で,スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うことをいい,洗髪行為は含まれない。
調査方法
 調査対象者,家族等の介護者への聞き取り,調査時の状況を総合的に勘案して判断する。
調査上の留意点
 日によって入浴形態が異なる場合は,より頻度が多い状況に基づいて判断する。
 入浴行為や清拭行為はこの項目には含まれない。入浴の方法,環境,形態,頻度は問わない。
 能力があっても介助が行われている場合は,実際に行われている介助の程度に基づいて判断する。
選択肢の判断基準
「1.自立」
上記の一連の洗身(浴室内で,スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うこと)のすべてを介助なしに自分で行っている場合をいう。
「2.一部介助」
介護者が石鹸等を付けて,体の一部を洗う等の場合をいう。声かけ,見守り等を行っている場合も含まれる。
「3.全介助」
洗身のすべての介護者が行っている場合をいう。
「4.行っていない」
日常的に洗身を行っていない場合をいう。清拭のみ行っている場合も含まれる。
認定調査票記載に関するQ&A
 入浴する環境にないため自分で身体を拭いている場合、「4.行っていない」と判断すべきか。 入浴の習慣がない場合、能力に基づき判断する。
 これらの記載から判断すると、洗身を行っていないという状態像は洗身を行えないほどの状態像、すなわちかなり重度の障害を持っていると言うことになります。

 それでは下図にて、この審査例の変更前(左:洗身が全介助)と変更後(右:洗身が行っていない)を見比べてみましょう。これを見ると要介護認定等基準時間の増加33分の内訳がわかると思います。整容で7.1分、間接生活介助で10分、医療関連行為で16分それぞれ増加し、それが33分の増加となり、たった一ヶ所の変更が要介護状態区分を2ランク上げることになったのです。

 洗身を行えないほどの重度の障害の存在が、この様な結果になるというのであれば、変更前の<入浴>の要介護認定等基準時間1分はどのように理解すればよいのでしょう。要介護認定等基準時間はあくまで要介護状態区分を推定するための時間で、実際に介護に要する時間ではないと厚生省は言っておりますが、全介助で入浴している人の入浴に関わる要介護認定等基準時間が1分(この介護行為の最低時間は0.9分)というのは一体どういうことなんですかね。
 この審査例のように状態像から見れば明らかに要介護5であるものが、要介護3と一次判定されてしまうと言う悲劇の原因はどこにあるのかというと、入浴に関する介護行為の間違ったデータに基づき、デタラメなロジックを組み立てたところにあります。そしてこの審査例の最大の悲劇は9つ樹形モデルのうちで少なくとも4ヶ所において要介護認定等基準時間を過小評価されるという73の調査項目の組合せを持っていたということになります。言い換えれば、4つの樹形モデルでことごとく外れクジを引いてしまったということです。
 この様な例はとくに珍しいものではありません。程度の差こそあれ、審査例の30〜40%に存在するのです。いやいやそうではありませんね。全例が間違った一次判定を受けているけど、たまたま60〜70%が状態像と一致しているということですね。誰かがこの一次判定ソフトを"あみだくじソフト"と言っていましたが、まさにその通りですね。あ〜恐ろしや、恐ろしや。
 これでも一次判定結果を原案とする二次判定の手順を改めない厚生省の役人の頭の中は一体どうなっているのでしょうね。余りにも大胆というか、お馬鹿さんというか、恥部を露出して大股開きでかっ歩しているただの能なしにしか見えないのですが、本当にみっともないですね。これが国政を預かる高級官僚の実体かと思うと背筋がぞっとします。
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