介護保険2次判定補助プログラムの評価nintei(ケアアシスト)の有用性

目的:
 先般、厚生省は「要介護認定二次判定変更事例集」によって、二次判定での変更の実態の一部を公開した。 同資料には、認定審査に必要十分なデータと、2次判定での変更結果と簡単な変更理由が載っており、厚生省が容認する変更がいかなるものであるかが、或程度推察可能である。 そこで、そのデータを用い、ケアアシストの二次判定補助資料の一つである類似例検索の有用性を検討した。

対象:
 厚生省例は、変更した事例のみであるので、本年3月以後の84自験例にても同様の解析を行った。 この自験例は、介護度を加算的に変化させる「特別な医療」を含まぬものである。 また、厚生省例からも同様の理由で3例、ひどいミスプリントがあった1例の合計4例を外し、36例を検討対象とした。

方法:
 方法は、各例の類似例検索で最も類似しているとして選ばれた介護度(C1)、一次判定結果(一次)、二次判定結果(二次)の大小比較で行った。

 大小の区分と意味付けは以下の通り。 意味付けにおいては、仮に、二次が正しいものとして行った。

1:一次=二次:非変更例
1:C1<一次=二次:C1が不当に低い
2:C1=一次=二次:完全一致
3:一次=二次<C1:C1が不当に高い
2:一次<二次:上方修正例
1:C1<一次<二次:C1が不当に低い
2:C1=一次<二次:C1が変更情報を与えない
3:一次<C1<二次:C1が変更方向を示唆
4:一次<C1=二次:C1が正当
5:一次<二次<C1:C1が変更方向を示唆
3:二次<一次:下方修正例
1:C1<二次<一次:C1が変更方向を示唆
2:C1=二次<一次:C1が正当
3:二次<C1<一次:C1が変更方向を示唆
4:二次<C1=一次:C1が変更情報を与えない
5:二次<一次<C1:C1が不当に高い
自験全例での結果(%):84例
1-1:13.1 1-2:40.5 1-3:15.5
2-1:0 2-2:3.6 2-3:0 2-4:16.7 2-5:6
3-1:0 3-2:4.8 3-3:0 3-4:0 3-5:0
自験全例での修正後の結果(%):55例
1-1:1.8 1-2:47.3 1-3:5.5
2-1:0 2-2:5.5 2-3:0 2-4:25.5 2-5:9.1
3-1:0 3-2:5.5 3-3:0 3-4:0 3-5:0
厚生省変更事例での結果(%):36例:(1-1から1-3は無し)
2-1:5.6 2-2:11.1 2-3:0 2-4:41.7 2-5:22.2
3-1:2.8 3-2:16.7 3-3:0 3-4:0 3-5:0
自験変更事例内での結果(%):26例
2-1:0 2-2:11.5 2-3:0 2-4:53.8 2-5:19.2
3-1:0 3-2:15.4 3-3:0 3-4:0 3-5:0

結果:
1:自験全例の解析中、二次が正しいものとの仮定の元で、一次と二次が一致したのは69%、不一致は31%であった。 C1と二次が一致したのは61%、C1が変更方向を示唆出来たのは6%、C1が変更に役立たなかったものは4%、C1が変更方向を違えたものが29%であった。 これは一見C1が一次に劣るかに見えるが、それは正しくない。 自験例の二次判定は、以下の二つのバイアスを含んでいる。

 1-1は、C1が不当に低い例となるが、これに該当した11例中8例が、一次にて要介護度1と判定され、C1が支援を示したものであった。 この誤差の発生理由は心情的なものである。 支援と1度の支給限度額は、各々6150単位と16580単位である。 他の介護度間の差に比べて、ここの違いは際だって大きい事、また、6150単位では、週5回の家事援助と2回の身体介護(合計6276単位)、例えば、週5日の食事準備と2回の入浴介助、で不足になってしまう事を考えれば、一次判定で1度と出たものをわざわざ要支援には落しづらいと考えてしまうのが、誤差発生の主な理由である。

 1-3は、C1が不当に高い例となるが、これは13例中11例が、一次にて4度と判定され、C1が5度を示したものである。 衆知の様に、一次判定プログラムは、痴呆による手間の増加を十分には考慮していない。 従って、厚生省が要介護度の事例として出した60例のデータでも、これはうまく反映されてはいないため、そのデータを使うケアアシストでも誤差が大きくなる。 そのため我々は、寝た切り状態の申請者で、意識が無いか、あるいはおとなしくて手間がかかりそうもない者は、C1が5度であっても4度と二次判定している。 これは、厚生省の当初の説明「痴呆が重くとも手間がかからねば、痴呆が軽くてはいかい等で手間がかかる場合の方が介護度が重くなる」に沿ったものである。

 以上により、これら2種の人為的操作を加えたものを削除したのが、修正後のデータである。 修正後のデータでは、一次=二次となるのは55%に低下し、C1=二次が78%に増加した。 このことは、上記2種の人為操作が一次判定の精度を見かけ上良くし、C1の精度を低くみせかけていた事を示す。 修正後のC1が変更方向を示唆出来たのは9%、C1が変更に役立たなかったものは6%、C1が変更方向を違えたものが7%であった。

 よって、C1を、変更するか否かの指標として使った時の本来の精度は以下の様になると思われる

 一次とC1が異なったもの(1-1、1-3、2-1、2-3、2-4、2-5、3-1、3-2、3-3、3-5)は全体の47%。 このうち、一次が正しいのにC1が違ったもの(1-1、1-3)は7%、C1の方向違い(2-1、3-5)は0%であった。

 よって、一次とC1が異なった場合、その方向に変更するのが誤りである場合は15%(=7%÷47%x100)で、しかもその全てが、同じとするのが正しい場合を変えてしまった事になる。 残りの85%は、正しい変更である。
   
 次に、一次とC1が同じ場合(1-2、2-2、3-4)は全体の53%。 このうち変更すべきなのに変更しなかったもの(2-2、3-4)は6%であった。

 よって、一次とC1が同じ場合、変更しないのが誤りである場合は11%(=6%÷53%x100)であった。 残りの89%は、正しい維持である。

2:自験例のうち、変更例を取り出して100%とし、厚生省の変更例と比較した。

 各区分同志の数値は、各々、0vs5.6、11.5vs11.1、0vs0、53.8vs41.7、19.2vs22.2、0vs2.8、15.4vs16.7、0vs0、0vs0、0vs0、(自験例vs厚生省例)であって、良く似た構成になっている。 この事は、少なくとも変更例において、厚生省は、我々とよく似た申請例、よく似た判定基準を持つ審査会の、一連の判定モデルを呈示したと言える。

 C1と二次の関係を、自験変更例と厚生省変更例で比較してみると、C1と二次が一致したのは69vs59、C1が変更方向を示唆出来たのは19vs25、C1が変更に役立たなかったものは11vs12、C1が変更方向を違えたものが0vs6であった。 当然の事ながら、両例はよく似ている。

 各変更例から、自験全例の修正と同様、4度か5度かの問題が発生しやすい一次判定での要介護度4または5度の例を削除してみたが、結果は殆ど変わりがなかった。

 以上は、実際に変更した例内での結論で、C1が役だつ例(数字が一致したものと変更方向が一致したものの合計)は、88%vs83%であった。 さらに、一次<C1<二次(2-3)と、二次<C1<一次(3-3)が何れの変更例でも0であることから、変更すると言っても2段階以上の増減は少ない現状がうかがわれる。

 とすれば、一次とC1が違っていたら、C1の方向に1度上げるという単純なアルゴリズムで、現在の二次判定の大半が済んでしまう事になる。 このやりかたで両例から得た介護度の数値と既知の二次判定の数値を比較すると、自験変更例では85%、厚生省変更例では75%が一致した。 これは、単純なC1の二次との一致の自験変更例の69%、厚生省変更例の59%に比べて、いずれも16%の改善である。

結論:
 二次判定は、類似例検索だけで行うものでは無い、まして、最類似例の示す介護度の数値(C1)だけで行うものでは決して無い。 しかしながら、変更するか否かの局面でC1だけを参考にしても、85%(人為部分修正後の自験例)が現行2次判定と同等の結果が得られ、変更決定後の介護度決定においても、単純な上げ下げで85%(自験変更例)と75%(厚生省変更例)に介護度の一致が見られた事は、C1だけでもかなり役に立つものと思われる。 さらに類似例検索では、C1(介護度の数字)のみならず、類似例と申請者データのレーダーチャート上の形の比較も、参考にすべきものであるし、最も良く似ているもの以外に、さらに5例の類似データも参考にすべきものとして出力される。 また、ケアアシストの二次判定補助は、類似例だけでは無く、中間評価項目平均得点、同チャートとの比較や、自立度分類との比較も備わっているため、同ソフトは、より高い精度での二次判定を援助するものと考えられる。

 実際の2次判定は、上記の参考資料のみならず、特記事項と主治医意見書も参考にして進められている。 これら全ての資料を詳細に検討し、公平で納得性の高い二次判定がなされることを願って止まない。

       2000/10/19

       ninteiとkaigo3のプログラマ 安達眞樹

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