ケアアシストと厚生省2次判定変更事例の一致について。(再掲)

 前稿の補助プログラムの評価にて、ケアアシスト(kaigo3)の類似例探索のみを利用した過激な簡略二次判定と、厚生省例の75%が同じ介護度を示した事をお伝えしましたが、その詳細を発表して欲しいとの御要望がありましたので、ここに掲載させていただきます。

 前項の繰り返しとなりますが、以下の手順で検討を行いました。 対象は、平成12年8月の厚生省保健福祉局老人保健課発行の、要介護認定二次判定変更事例集の40例中、ひどいミスプリントがあった1例、特別な医療が加算されている3例の合計4例を除いた36例です。

 尚、中間評価項目得点にも、小数点以下1桁のレベルでミスプリントがあるものが他に幾つかありましたが、今回の検討にはケアアシストを使い、調査票から作成しましたので、このミスプリントの影響は全くありません。 もし、kaigo3で検討なさる場合は、中間評価項目得点から始める事になりますので、第3群の得点が30.5になっているものはミスプリントですから、30.6に変更して検討して下さい。

 この36例について、ケアアシストに調査結果を入力したところ、当然の事ですが、一次判定の介護度と基準時間は一致しました。 次に、ケアアシストの類似例検索で最類似例として算出された例の介護度が、表の「最類似例」です(前稿ではC1と記してあります)。

 表の「二次判定」は、厚生省の変更事例集での変更後とされる介護度です。 これと、下記の方法で過激に簡略化した二次判定の結果(表では「簡略法」)を比較しました。

 簡略法は、一次判定と最類似例を比較し、同じならそのまま、最類似例が一次判定より重ければ一次判定より1階級重く、最類似例が一次判定より軽ければ一次判定より1階級軽くしたものを、簡略法の結果とするというものです。

 例えば、一次判定で2度の場合、最類似例が3度でも4度でも5度でも、とにかく一次判定結果を1度上げて3度とし、一次判定が3度なら最類似例が2度でも1度でも支援でも、とにかく一次判定結果を1度下げて2度とするというのが、この簡略法です。

 表には、厚生省の二次判定と簡略法の結果が並べて記載してあります。 これらの一致不一致を示したものが表の「結果」です。

■要介護認定二次判定変更事例集(平成12年8月 厚生省老人保健福祉局老人保健課)
 簡略法:一次判定と最類似例の要介護度を比較し、異なっていた場合、その異なった方向へ1度だけ変更する

事例
番号

介護度

一次判定 最類似例 二次判定 簡略法 結果

不一致の型

不一致事例での変更理由

11 1 1 2 1 不一致 一次判定=最類似例 パーキンソンの状態変動
17 1 1 2 1 不一致 一次判定=最類似例 抵抗、失行
21 2 1 3 1 不一致 変更の方向が逆 抵抗、暴行
23 2 2 3 2 不一致 一次判定=最類似例 自殺企図
26 2 5 4 3 不一致 変更量不足 アルツハイマー憎悪、徘徊、失行
31 3 2 4 2 不一致 変更の方向が逆 アルツハイマー、抵抗、せん妄
33 3 3 4 3 不一致 一次判定=最類似例 アルツハイマー、徘徊、不安焦燥
38 3 5 5 4 不一致 変更量不足 昼夜問わず這い回る
25 5 3 3 4 不一致 変更量不足 ボケ無、状態良好
1 自立 支援 支援 支援 一致  
4 支援 1 1 1 一致
5 支援 1 1 1 一致
6 支援 1 1 1 一致
7 支援 1 1 1 一致
8 支援 1 1 1 一致
2 1 支援 支援 支援 一致
3 1 支援 支援 支援 一致
12 1 2 2 2 一致
13 1 2 2 2 一致
14 1 2 2 2 一致
15 1 2 2 2 一致
16 1 2 2 2 一致
9 2 1 1 1 一致
10 2 1 1 1 一致
18 2 4 3 3 一致
19 2 4 3 3 一致
20 2 5 3 3 一致
28 3 5 4 4 一致
29 3 4 4 4 一致
30 3 5 4 4 一致
32 3 5 4 4 一致
34 3 4 4 4 一致
35 3 5 4 4 一致
24 4 3 3 3 一致
39 4 5 5 5 一致
36 5 3 4 4 一致
計36例 27例一致

 結果は、36例中27例(75%)が一致しました。 ということは、厚生省の変更例が100点満点だとすると(私は決してそうは思いませんが)、この過激な簡略法による変更は75点を取れると言うことです。 通常の試験なら、当然合格点です。

 次に、不一致の9例を調べると、3例が変更量不足でした。 元々、簡略法は1階級しか変更しないと定めてありますから、これは仕方ありません。 言ってみれば、当たらずといえども遠からずと言うことになります。 結局、これを加えると合計30例(80%)が良い結果を出した事になります。 残りの6例のうち4例が変更の必要性を検出出来ず、2例が変更の方向を違えた事になります。

 不一致例を詳細に検討すると、パーキンソンによる状態変動の1例を除いた残りの8例全てに於て老人性痴呆や精神疾患の症状の有無が、変更の原因となっています。 

 元々、これらの精神神経疾患症状の有無による手間の増減は、厚生省の一次判定には明瞭な形では組み込まれていません。 従って、その中間評価得点にも明瞭に組み込まれてるとは言い難く、この中間評価得点を使う類似例判定から派生させた簡略法でも対応し切れないのは当然です。 私個人の考えとしては、第7群を極端に手間のかかるものとそうでもないものに分けて群を増やし、それで状態像の類似から介護度を決めるべきだと思っているのですが。

 尚、はっきりお断りしておきますが、前稿もこの稿も、この簡略法の使用をお勧めするものではありません。 この簡略法は、介護度を変更して新な介護度を決める時の小さなヒントに過ぎません。 しかし、この過激な簡略法ですら、厚生省の変更例の殆どと一致することは、この方法の様に状態像を考慮した方が納得性が高いのは明かであることを示しています。

 実は、この「納得性」も曲者で、認定審査委員にとっては、現時点では、どの位の介護コストがかかるのかの実体感の蓄積がまだありませんから、2階級以上の変更には心理的抵抗があり、「とりあえず」1階級の変更で納めておくというのが現状であろうと推察されます。 だからこそ、1階級しか動かさないこの簡略法が良く一致したのであろうと、私は考えています。 この簡略法が有効なのは、「とりあえず」の期間のみでしょう。 今のままの判定方式が続いたとしても、もっと状態像とコストのデータが審査委員に蓄積されれば、現在のままでの簡略法が用をなさなくなるのは当然です。 ですから、この簡略法を使われるにしても、決して過剰な重みをかけない様、お願いします。

 繰り返しますが、現時点で厚生省の変更例と同様な変更をしたいとお考えの際には、この方法が実に良く役立つのは紛れもない事実です。 これを踏台とし、精神神経疾患の症状の有無による手間の増減を考慮すれば、厚生省の変更例と同様の変更が可能となるでしょう。 但し、厚生省に全面的に従うのが正しいとは限らない事を忘れてはなりません。

 以上、前稿で述べた過激な簡略法について説明させていただきました。 精神神経疾患のある申請者の場合の認定審査が混乱状態にあるのは、全国どこの審査会でも同様であろうと思われます。 本質的な対策は、一次判定のプログラムを改良(と言うよりは、尾形新一郎氏の言うように状態像が主体となるよう作り直し)すべきだと考えますが、厚生省は当分(年単位)その気は無いと発表し続けています。

 当塩谷郡市では、先日、介護認定審査会委員現任者研修会が開かれ、その席上、出席者から県の担当者に、一次判定を早急に改善するよう厚生省に伝えて欲しいとの要望が次々出されました。

 県の担当者は、厚生省も要望が有ることは知っていて、本年8月より介護の状況に関するデータを収集を始めたとのこと、但しこれは、介護の方法や環境の改善改良があるか、その改善改良によって、介護時間がどう変わったかの調査らしいこと、在宅と施設の違いについては、いくらかは盛り込まれそうなこと、よって、現時点では、一次判定の構造自体を見直す事には直接にはつながりそうも無く、判定構造を変更するかしないかは未定で、当然、するにしてもいつ行うかも未定であるというのが厚生省の見解だそうで、県としては、これまで同様、機会が有る度に厚生省に我々の要望を伝えて行くとの話でした。

 この様な動きが全国に広まって、より納得性の高い判定方法が開発され公式採用される事を願っています。

 平成12年11月7日

 ケアアシスト(nentei.exe)、kaigo3のプログラマ 安達眞樹

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