要介護認定とCPS(認知活動尺度)
一次判定ソフトは要介護認定に際し様々な不具合が明らかになっていることは周知の事実です。より介護の手間を要するものが、介護の手間の少ないものより要介護度が低く判定されるなんていうことは日常茶飯事です。すなわち、チェックを増やすと逆に要介護度が下がってしまうなって事が頻繁に起きるのです。このような不具合を我々は「状態像の逆転」と呼んでいます。また、このソフトは意志の疎通・問題行動などの痴呆のあることによる介護の手間を要介護度に反映することが出来ません。その結果、これらの一次判定ソフトの不具合の尻拭いは、介護認定審査会が一手に引き受けることになります。
そこで我々は「状態像の逆転」に対しては、"状態像の例60"を使い、状態像に見合った要介護度認定を推奨し、それでも十分ではない痴呆を有する方の認定には、CPSの可能性を模索し始めました。もとより要介護認定において公平・公正は大原則であり、このCPSを採用することには慎重でなければなりませんが、日本医師会が推奨する方法でもあり、主治医意見書の記入項目をそのまま使い導き出すことが出来るという簡便さが魅力で、そう言った観点から見ても公平性をキープできるのではないかと考えます。
次に示すのは、CPSを構成するアセスメント項目(図1)と主治医意見書の理解および記憶の項目(図2)です。見てお分かりのように、主治医意見書の記入項目とCPSのアセスメントは見事にオーバーラップしています。これはどう言うことでしょう。そうです、主治医意見書はCPSを想定して作られているのです。・・・多分^-^; だったら使わない手はないですよね。
■図1
Cognitive Performane Scale(CPS)を構成するアセスメント項目
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短期記憶
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短期記憶に問題ない(5分後に覚えているようにみえる)
0.問題なし
1.問題あり
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日常の意思決定を行うための認知能力
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どの程度自分の判断でその日の活動をうまくなしとげるか
(たとえば、起床や食事すべき時間がわかる、衣服を選ぶ、どのような活動をする)
0.自立:首尾一貫して的確である
1.限定的に自立:新しい事態に直面したときにのみいくらか困難がある
2.中程度の障害:判断力が弱く、合図や見守りが必要である
3.重度の障害:判断できないか、まれにしか判断できない
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| 自分を理解させることができる能力
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どのような方法を用いて表現してもよい
0.理解させることができる
1.通常は理解させることができるが、言葉を思い出したり考えをまとめるのが困難
2.時々は理解させることができるが、その能力は具体的な欲求(食事、トイレなど)に限られる
3.ほとんどまたはまったく理解させることができない
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| 食事の自己動作
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過去7日間にみられた食事について評価する。自立して活動している場合も他者の励ましや観察・誘導の有無に特に留意
0.自立:自分でできる
1.観察・誘導:見守りや励ましがあれぱ自分でできる
2.部分的な援助:かなりの動作は自分でできる
3.広範な援助:動作の一部は自分でできる
4.全面依存:まる7日間すべての面で他の者が全面介助した
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■図2
主治医意見書の「3.心身の状態に関する意見」の(2)理解および記憶の項目
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| (2)理解およぴ記憶 |
| ・短期記憶 |
□問題なし |
□問題あり |
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・日常の意思決定を
行うための認知能カ |
□自立 |
□いくらか困難 |
□見守りが必要 |
□判断できない |
| ・自分の意思の伝達能力 |
□伝えられる |
□いくらか困難 |
□具体的要求に限られる |
□伝えられない |
| ・食事 |
□自立ないし何とか自分で食ぺられる |
□全面介助 |
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CPSの求め方(以下のフロー図によって、0〜6までの痴呆の程度が明らかにされる)
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(0〜2) |
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日常の意志決定を行うための認知能力
(起床や食事の時間が分かる、衣服を選ぶ) |
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(3) |
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以下の項目の該当数
--認知能力(1〜2)
--自分を理解させる(1〜3)
--短期記憶に問題(1) |
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該当
(0項目) |
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該当
(2〜3項目) |
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(4) |
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全面介助 |
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(0〜3) |
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該当
(1項目)
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以下の項目の該当数
--認知能力(2)
--自分を理解させる(2〜3) |
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自立ないし
何とか自分で
食べられる |
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該当
(0項目) |
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該当
(1項目) |
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該当
(2項目) |
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要支援
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要介1
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要介2
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要介3
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要介4
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要介5
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このフロー図を見てもお分かりのように、CPSの1〜6が要介護度の要支援〜要介5に見事に当てはまります。従って我々はこのCPSによる痴呆の尺度は、痴呆を有する方の審査において、要介護度を確定する上で一次判定ソフトの不具合を補填する可能性のある新たな材料として注目しています。 何度も言いますが、介護認定審査会においてこのような新たな判定のための方法を模索し、一次判定ソフトの尻拭いをしなければならない理由は、厚生省の怠慢以外の何ものでもないのです。 最後にこのCPSに関する論文の抄録を紹介いたします。
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介護保険下での痴呆の評価方法に関する研究
−Cognitive Performance Scale(CPS)の信頼性と妥当性−
山内慶太・池上直己
慶應義塾大学医字部医療政策・管理学教室
| Cognitive Performance Scale(CPS)は、施設ケアのためのアセスメント表であるMinimum
Data Set(MDS〕の項目を用いて作成された観察式の痴呆の評価尺度である。CPSに必要な項目は在宅ケアのためのMDS-HCにも組み込まれ、さらに要介護度の分類方法として筆者らが開発した「要介護度総合分類」にも採用されている。そこで、16在宅ケア機関の利用者145人を対象に、在宅ケアにおける評価者間信頼性と妥当性を検証した。信頼性はCPS得点のweighted
χが0.77、妥当性はCPS得点と柄澤式「老人知能の臨床的判断基準」の評点のSpearmanの相関係数が0.84と、ともに十分な水準にあった。また、在宅ケア機関425人と長期ケア施設782人を対象にした分析から、俳個や暴行等の問題行動を呈する対象者がCPS得点によって適切に類別できることが確認された。介護保険制度の要介護度の認定では、痴呆が適切に把握されることが肝要であり、CPSはそのための尺度として有用であると思われる。 |
老年精神医学雑誌10:943-952、1999 |
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