栃木県が示した"賢い特記事項の書き方"
 私の所属する塩谷郡市医師会では11月29日、「主治医意見書の書き方」という研修会を開催しました。その際、講師として出席された栃木県高齢対策課の担当者から、「審査会において変更を行った具体的事例」というプリントが配られました。主治医意見書を書くにあたり、特に特記事項などの記入に際し、どのような書き方が利用者の状態像を的確に表現できるのか迷うところでした。そういった意味では、この資料はかなり参考になります。

 しかし、この資料は片手落ちであることも事実です。具体的事例として特記事項などの一部を抜き出したもので、基本調査票、主治医意見書は示してはおらず、利用者の状態像は把握することは出来ません。しかるに一部分だけを抜粋し、このような記載例は変更するにあたり有用であったという資料提供は、とても危険であると感じます。県の担当者にこの点について質問したところ、この資料は県独自にまとめたもので、厚生省は関与していないと言うことでした。県がこのような資料を作成し、我々主治医に提示するということは、今まででは到底考えられなかったことで、積極的な前向きな姿勢と評価すべきだと感じましたが、何かちょっと勘違いしてるんじゃないの? と思ったのは私だけだったのでしょうか、、、

 いずれにしろ、特記事項の書き方に苦慮している私たちには、とても参考になると思いますので、以下に原文のまま掲載します。どうぞご利用下さい。

審査会において変更を行った具体的事例

主治医意見書の記載

1 介護に要する時間とは直接的に関係しない事項

(1)長時間を要する見守りを行っており、その見守りによって介護に要する 時間が延長又は短縮していると判断でき変更をおこなった事例。

@日により症状が違うため症状の安定がなく痴呆時には症状がひどいとの意 見を勘案。特記事項にも記載あり。
要介護2→要介護3
※介護認定審査会において介護の手間が勘案できる記載があるとよい。

A主治医意見書の傷病に関する意見欄、心身の状態に関する意見並ぴにその 他特記すべき事項より老人性痴呆が進行していることがうかがえ長時間の 見守りが必要と判断され変更。
要介護3→要介護4
※老人痴呆が進行しているのみでは長時間の見守りが必要かどうか不明。問 題行動に対し家族が対処している介護の手間の状況を記載することが望まし い。

B主治医意見書のその他特記すべき事項に記載のあった「数年前までタバコを吸っており時々火をつけようとする、徘徊は家族が注意してふせいでいる。」により長時間の見守りが必要であると判断され変更。
要介護1→要介護2
※家族が見守りをしていることで問題行動が防げているために、介護に要す る時間が短縮されていると判断され要介護度を変更するには典型的な例であ る。

C主治医意見書特記すべき事項家族介護負担大との記載ありより、家族の見 守りの必要性を考慮し変更。
要介護2→要介護3
※家族介護負担大の理由が記載されていることが必要。

D平成9年頃より物忘れがひどくなり、時間場所の失見当識もあり、歩行困 難も徐々に増悪し、杖歩行から車椅子になっている。特に夜間頻尿となり、 介護者がその見守りのため何回も起きなければならない。今後も昼夜逆転 が著明になる可能性も高い。との記載内容により変更。
要介護2→要介護3
※昼夜逆転、失見当識の問題行動が調査項日で同等に評価されているのであれば、変更の理由にはなりにくい。程度回数が記載されていることが望ましい。

E夜間せん妄、徘徊により始終見守りが必要、火の不始末についても注意を要す記載あり。中間評価項目得点も考慮し変更。
要介護3→要介護4
※夜間せん妄、徘徊の程度、頻度が記載されていると介護の手間を勘案するのに参考にしやすい。

F意見書から痴呆度が高く徘徊等問題行動が多くみられ常時見守りが必要であるとの記載により介護の手間が増えると判断し変更。
要介護1→要介護3
※徘徊の頻度、介護の手間が記載されていることが望ましい。

G老人性痴呆、幻視、幻聴、妄想、暴言、暴行、介護への抵抗、徘徊、不潔行為がみられ痴呆が重く常時の見守りが必要と判断されたため変更。
※幻視、幻聴、妄想、暴言暴行、介護への抵抗、俳掴、不潔行為がある痴呆が重いことを理由には変更できない。具体的な状況、介護の手間、日常生活への影響等が記載されていることが望ましい。

H脳梗塞、脳挫傷、痴呆、燕下困難で見守りが必要と判断されたため変更。
(日常生活自立度、理解度、及ぴ記憶の判断不能、伝達不能、排泄や清潔に全介助を要することも加味した。)

I脳出血、右大腿骨頸部骨折。介助にて室内移動がやっとの状態また、摂食について見守りが必要と判断され変更。

J脳血栓、両側椎骨動脈狭窄及ぴ小脳梗塞、筋力低下しているため転倒の危険があり見守り必要また燕下に注意を要するため見守り必要と判断され変更。
※HIJは、介護者の状態が調査項目と同様であれば、これらの記載で変更を行うのは望ましくない。

K調査項目では、歩行つかまらないでできるだが意見書では膝関節痛及び加齢も加わり最近とみに歩行が不安定になっており転倒の危険性あり、見守りが必要との記載から介護に要する時間が長いと判断し変更。
要支援→要介護1
※具体的な状況の記載がされていることが望ましい。

L介護度に対する予後の見通しは悪化していることを理由に変更。
要介護4→要介護5
※予後の見通しが悪化していることを理由変更はできない。

2 客観化できない心身の状況

(1)本人の意欲の有無が原因となって、介護に要する時間が延長または、短縮していると判断でき変更を行った事例。

@鬱状態に波があり、鬱状態がひどくなると意欲が低下し歩行ができなくなるとの記載を勘案し変更。
要支援→要介護1
※具体的な記載であるため介護の手間を勘案しやすい。

A初老期痴呆により食事の欲求なし排泄の意思も示さない等の記載により変更。
要介護2→要介護4
※介護者の状態が調査項日と同様であれば、これらの記載で変更を行うのは望ましくない。

B不安が強いため入浴できず介護に要する時間が延長すると判断し変更。

C新聞は毎日読むなど知能レベルを保ちながら食事、排泄以外のことは自分でやろうという意欲がなくなり、それが全体的に筋力低下も進行させており家人の過剰の介護の記載あり。状態像、中間評価項目、自立度の組み合わせも考慮し変更。
※具体的な記載であるため介護の手間を勘案しやすい。

D第1群両下肢のいちじるしい筋力低下車椅子使用しているが自力移動不可により変更。
要介護3→要介護4
※調査項日との一致があれば、自力歩行ができないことを理由に変更することはできない。そのことの具体的記載が必要である。

3 施設入所・在宅の別・住宅環境

(1)施設入所・在宅の別、住宅環境が原因となって、介護に要する時間が延長または短縮していると判断でき変更を行った事例。

該当事例なし

4 家族介護の有無

(1)家族介護者の有無が原因となって、介護に要する時間が延長または短編していると判断でき変更を行った事例。

該当事例なし

5 その他の理由で明らかに介護の手間が勘案できると判断し変更を行った事例

@意識のレペル良好、初期時、服薬自己管理可能との記載により変更。
要介議2→要介護1

A問題行動による介護の手間を勘案し変更。
徘徊や幻聴、外出して戻れない、一人ででたがるなどの問題行動により介護の手間が多いと判断し変更。

B健忘著明により日常生活において見守り必要との記載があり。手間が勘案できると判断し変更。

C痴呆状態がひどく主治医意見書に昼夜逆転、不潔行為、鬱状態、感情不安定、不定愁訴多い、との記載と特記事項の記載を勘案し変更。
※@ABCは、日常生活への影響等が記載さてれいると介護の手間を勘案しやすい。

D痴呆が進行し、現在意思疎通を図ることは既に困難となっている。ADLはすべての面で低下し意思発動性の低下も顕著。失名詞失見当識は特にひどく自分の名前も言えないことあり。の記載により変更。
要介護2→要介護3
※介護者の状態が調査項目と同様であれば、これらの記載で変更を行うのは望ましくない。

E徘徊等の問題行動が頻繁に見られ、着替え等身の回りのこともできない状況であり、ほぼ24時間の見守りが必要である。服薬に関しても家族による100%の管理が必要である。との記載により変更。
要介護2→要介護3
※具体的な記載であるため介護の手間を勘案しやすい。

F脳梗塞、両下肢外傷の診断名により変更。
非該当→要支援
※病気と介護の手間は異なるものである。診断名を理由に介護度の変更はできない。

G歩行不安定により介助が必要との記載で変更。
要介護1→要介護2
※歩行が不安定であることは変更の理由にはならない。介護の手間を勘案できる状況が記載されていることが必要である。

特記事項の記載のポイント!? 

 どうもこれを読んでみると、いくつかのポイントがあるようです。

  • 調査項目と重なる表現はダメなようです。調査項目からはじき出される一次判定がデタラメなのだから、介護の手間を想定できるものなら認めるべきだと思うのですが、、、
  • 「介護の手間」という表現は必須ですね(笑) 
  • 状態像を書くだけでは不足のようで、そこから派生する具体的な介護の状況(声かけ、見守り、介助など)が必要なようです。
  • いずれにしろ、審査会がこれをどのように評価するかということに左右されるわけですが、利用者のために主治医として出来ることは最大限に発揮したいものです。主治医の腕の見せ所といったところでしょうか^-^;
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